いつものように朝起きてトイレに入り、用を済ませてレバーを引いた瞬間、いつもと違う感触に気づきました。スカッという軽い手応えだけで、ジャーッという水の流れる音が全くしないのです。便器の中は流れる前と何も変わっていません。一瞬、頭が真っ白になりました。もしかして断水?いや、昨夜のニュースではそんなことは言っていなかったはず。慌てて洗面所の蛇口をひねると、勢いよく水が出ました。断水ではない。ということは、問題はこのトイレ自体にあるということです。恐る恐るタンクの蓋を持ち上げて中を覗き込むと、そこにあるはずの水がほとんど空っぽの状態でした。これでは水が流れるはずもありません。一体なぜ水がたまらないのか、見当もつきませんでした。ひとまずスマートフォンで「トイレ タンク 水 たまらない」と検索すると、様々な原因がリストアップされていました。最初に確認すべきは止水栓だと書かれていたので、トイレの隅にあるマイナスドライバーで回すネジのような栓を確認しましたが、しっかりと開いています。次に書かれていたのが、タンク内部品の不具合でした。もう一度タンクの中をよく観察すると、水位を感知する浮き球のアームが、タンクの壁に少しだけ接触しているように見えました。もしかしてこれか?と思い、指でアームを軽く中央にずらしてみました。するとその瞬間、「シューッ」という音と共に、細い管から勢いよく水が出始めたのです。あっという間にタンクに水がたまり、しばらくすると音は静かに止まりました。試しにレバーを引いてみると、今度はいつも通り、ゴオオッと勢いよく水が流れました。原因は、何かの拍子に浮き球のアームの位置がずれてしまい、壁に引っかかって正常に作動しなくなっていた、という本当に些細なことでした。あの時の安堵感は今でも忘れられません。業者を呼ばずに済んで良かったと胸をなでおろすと同時に、日頃から家の設備に関心を持つことの大切さを痛感した出来事でした。
ある朝トイレの水が流れず焦った話