マンションの浴室から漂う嫌な臭いに悩まされた経験は、決して気持ちの良いものではありませんでした。原因を探して排水口を覗き込み、見たくない汚れと格闘し、時には効果が出ずに落胆することも。しかし、今振り返ると、あの経験は単に臭いを消すための作業だっただけでなく、自分の住まいや暮らし方について改めて考える良い機会になったように思います。最初は、臭いの原因を特定し、それを除去することだけに集中していました。排水口を掃除し、換気扇をきれいにし、浴槽のエプロンを外してカビと戦う。確かに、それらの対策によって臭いは改善しました。しかし、根本的な問題は、なぜそこまで汚れやカビが溜まってしまったのか、という点にあることに気づいたのです。それは、日々のちょっとした怠慢の積み重ねでした。入浴後に換気扇をすぐに止めてしまう、排水口の髪の毛を数日放置してしまう、湿気を拭き取らずにそのままにしてしまう…。一つ一つは些細なことでも、それが続けば、臭いの温床となる環境を作り出していたのです。臭い対策をきっかけに、私は「予防」という考え方をより意識するようになりました。問題が起きてから対処するのではなく、問題が起きにくい環境を維持すること。そのために、入浴後の換気を徹底し、排水口のゴミはその日のうちに処理し、水滴をこまめに拭き取る、といった習慣を身につけました。最初は面倒に感じたこれらの作業も、続けていくうちに当たり前になり、むしろそれをしないと気持ちが悪いくらいになりました。そして、清潔な状態が維持されるようになると、浴室は単に体を洗う場所ではなく、心からリラックスできる「快適空間」へと変わっていったのです。嫌な臭いがしないだけでなく、見た目にも清潔で、空気が澄んでいる。そんな空間で過ごすバスタイムは、以前よりもずっと質の高いものになりました。お風呂の臭いというネガティブな問題と向き合ったことで、結果的に、より快適な住環境と、それを維持するための良い生活習慣を手に入れることができたのかもしれません。住まいを大切にし、丁寧に暮らすこと。その重要性を、浴室の臭いが教えてくれたような気がします。
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